2020年9月1日火曜日

 ようこそ文藝yaminaveへ!

 ここは、小説家を目指してはや幾年の文弱の徒、きうりのホームページ(的ブログ)です。
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群雛文庫『超能力カメラマン内木』1巻の表紙です
(画・バカエルさん

2018年5月23日水曜日

◆忙しいのにヨナス

 ハンス・ヨナスという哲学者についてはそんなに詳しくなくて(じゃあ誰についてだったら詳しいんだ、と言われると困るけど)、ただ、現代思想と倫理学のからみで名前はよく目にしていました。

 例えば映画「ハンナ・アーレント」で登場しましたし、あと加藤尚武の著作にも名前が出てきました。大学のとき、恩師の講義でも名前が出てきたことがあって、その時は自然法の系譜に位置づけられていたと思います。

 ただ、どこで得た印象だったかは忘れましたが、ハンス・ヨナスという人の哲学は宗教色が強いというイメージがありまして。それで、なんとなく取っ掛かりを見つけられずにいました。

 でも最近『ハンス・ヨナスを読む』という本を読みまして。日本人による解説書なのですが、何気なく目を通していて、やっぱりヨナス哲学は本当に「これでいい」のかよくわからんな…と思っていたら、ある個所で急に惹きつけられる部分がありました。

 詳しくは書きませんが、僕が普段考えていることと、ピタッと一致する部分を見つけたのです。

 あれっ、ハンス・ヨナス、意外と気が合う……?

 というわけで、今までの縁のなさから一転して、急に主著を読みたくなってきたのですが、いかんせん値段が高い。いつものことです。

 まあなんですか、忙しい時期に限って、ややこしい本を読みたくなるというマーフィーの法則のような話です。

2018年5月22日火曜日

◆脳を鍛えよう

 普段、仕事で文章を書く機会が多いので、そこらへんの能力は衰えていないだろう……と、考えています。

 うん、まあ、完全に衰えていないとは思うのですが。

 ただ、仕事で書く文章というのが、内容的に「いつも同じパターン」「型通り」のものなのです。オリジナリティを発揮する余地があんまりない。

 そうすると、一定のパターンの文章を書くことだけに脳味噌が慣れてしまって、それ以外のパターンを書くための脳味噌の部位が退化していくのではないか。そんな漠然とした不安があります。

   *

 脳科学の成果なのか、最近は、ハウツーものの本や情報にも、「脳をいかに活かすか、活き活きとさせるか」がテーマとなっているものが多くなってきました。

 人生100歳時代、などと言われるようになってきたので、なおさらでしょう。長生きしつつも、脳や身体をできる限り衰えさせない知恵や工夫が求められています。そうしたニーズと脳科学の成果が一致すれば、上述のようなテーマに沿った情報が必然的に増えてくるわけです。

 ただまあ、ダイエットと同じで、科学の成果が安直に世間のニーズと結びつく場合というのは、どこか胡散臭いところがあるものですけどね。

 情報の発信者が、あいまいな仮説の中から「いいとこどり」をして、商品や情報の提供に利用しているのではないか。そんな風に感じるところもあります。

 科学的な事柄なんてのは、99%が仮説に基づいていると言っても過言ではありません。繰り返しますが、ダイエットと同じで、この間までまことしやかに言われていた説が突然ひっくり返るなんてことも珍しくはありません。

 とは言っても、人間には暗示の効果というやつがあるのです。

 仮説だろうがなんだろうが、その気になったら勝ち、なのだと思います。

 と、そう考えながら、脳関連のハウツー情報と、僕の不安を結び付けてみようとするわけです。

   *

 いきなりですが、シナプソロジーという考え方がありまして。

 特に難しい話ではありません。脳は、一定のパターンからはみ出すことによって、ますます鍛えられるのだそうです。

 例えば、いつも同じ道を通っているけれど、たまには違う道を通ってみるとか。

 そうすると脳が混乱します。疲れます。だけどその混乱を通して、結果的に「脳が鍛えられる」形になるのだそうです。シナプスが増えてそういうことになるから「シナプソロジー」なんですね。

 たぶんこれ、読書でも有効なんじゃないかな。読んだことのないジャンルや著者の本を読んでみる、それだけでかなり脳は鍛えられそう。

 さて、これを僕の不安に結び付けてみる。

 一定のパターンの文章を書くことだけに慣れてしまって、それに不安を感じている僕。ならば、それとは別の全く違うパターンの文章を書いて、「脳を鍛えさせる」ことが大切だ、という結論になります。

 しかし一方で、某ハウツー本には、「脳をあんまり疲れさせるな」とも書いてあります。

 どうも、人間が感じる疲労というのは、脳がそう思い込んでいるだけで、半ば暗示のようなものらしい。頭では「疲れた~」と思っていても、肉体的には意外とそうでもなかったりすることが、実際にあるそうです。

 脳が一番疲れる要因は何かというと、「あれこれ迷う」ことです。

 深刻な悩みはもちろんですが、日常生活で「次は洗濯をしようか、台所仕事をしようか」というちょっとした迷いや悩みも、脳を余計に疲れさせるらしい。

 ちょっと取りとめなくなりそうなので、あんまり細かくは書きません。とりあえず、さらなる結論として、

①普段は脳をむやみに疲れさせず、
②ポイントを押さえて、脳を逐次「混乱」させることで鍛えていく。

 の2点が大切だということは言えそうです。

2018年5月20日日曜日

◆ワキの下の脱毛治療

 ワキ毛の脱毛をすることに決めました。

 もともと、ワキ臭がひどい体質なもので…。

 結婚して、秋頃から新生活が始まる予定なので、これを機に肉体改造することにしたのです。

 で、形成外科に行って相談(カウンセリング)しました。

 なんでも、ワキ臭の治療としては主に2種類あるそう。

 ①制汗剤で汗と匂いを抑える。
 ②脇の下の肉をこそぎ取る手術を行う。

 僕の場合、①は自分でもさんざん試したので物足りない。

 かと言って、②は1週間くらい入院することになるらしく、それでは仕事に差し支える。

 じゃあ脱毛は? と聞いてみたところ、「それもアリだ」とお医者さんは答えました。

 ただ、脱毛はあくまでも脱毛であって、ワキ臭を完全に除去するわけではないそうです。

 毛根を焼きつぶすのと一緒に、ワキ臭の大元の部分も封じ込める効果が期待できる、とのこと。

 まあ①と②の中間くらいで、妥当なところかな。

 というわけで、これに決定。

 予約を入れて、さっそく脱毛治療の1回目を済ませてきました。

 レーザーで、ジュッ、ジュッと毛穴一つひとつを焼きつぶしてもらいました。

 10分くらいかな?

 焼きつぶす時は、さすがにちょっと熱くて痛かったけど、耐えられないほどではありませんでした。

 今後もこの調子で、さらに複数回、レーザー治療を行います。合計10回くらい繰り返すことで、完全な脱毛の効果が期待できるんだったかな。

 1回の施療ごとに、3週間?4週間?くらい、間を空けるそうです。

 で、1回の施療の料金は6千円台。

 まあ、1~2か月に一度、6千円の出費で、脱毛とワキ臭の軽減につながるのなら安いものです。

 20年くらい前は、ワキの下の永久脱毛というと30万円くらいかかると言われていたと思いますが…(米沢りかの『アクション大魔王』で読んだ記憶がある)。安くなったんですね。

 ちなみに、この医院では、最初にカウンセリングを行った段階で、制汗剤もひとつ提供してくれました。

 お医者さんお墨付きのやつ。

 今まで制汗剤とかいろいろ試したけど(Banのようなメジャーなやつから、塩化アルミニウムまで)期待外ればっかりだったので、正直なところ今回もあまり期待していなかったのですが…。

 しかし、今回の制汗剤は、効果がありました。

 カウンセリングを行ってから、1回目のレーザー治療の間に、この制汗剤を使ってみたのです。

 だいたい一週間くらい使ったことになるのですが、その間、自分のワキ下の臭いを一度も嗅がずに済みました。まったく臭いが気になりませんでした。

 もちろん、効き目や、「気になるかどうか」の気分には個人差があると思います。

 でも、もしもワキの下の汗や臭いを制汗剤で何とかしたい…という方がおられましたら、僕はこれを紹介したいと思います。Amazonでも普通に売っています。

 商品名は『デオドラント剤 ディーバー』です。

2018年5月18日金曜日

◆脳と疲れ

 昨日はブログ更新できず。無念。

 ブログなどというものは、結局のところ「質でもなく量でもなく更新頻度が肝心」だなと最近改めて気付いて(某ハウツー本を立ち読みしたらそう書いてあった)、実践していたのです。

 でもやはり、眠いとか時間がないとか疲れているとかの状況だと寝言すらも書けない、そういうこともあります。

 そういえばこの「疲れている」という自覚も、近頃のハウツー本いわく、思い込みのようなものなんだとか。

 いわく、本当はそれは「脳疲労」であって、実際に肉体的に疲れているわけではない。だから脳を回復させてやれば疲れは取れるうんぬん……。

 そうした脳疲労の回復には、睡眠や瞑想が有効なのだそう。

 どこまで真に受けていいかは分からないですけどね。

 ただ、疲労の何割かは思い込みのようなものなんだとゆる~く考えていると、ちょっと疲れを感じたときも、もうちょっとだけがんばれそうな気がします。

 なので、この「もうちょっとのがんばり」を積み重ねて、生活も仕事も趣味もいろいろと充実させていきたい所存です。

2018年5月16日水曜日

◆A氏のモヤッ

 ふた回りくらい年下の同僚A氏が、恋人B氏との関係について「ちょっと悩んでいる」とのことでした。

 話を聞いてみると、ABの2人は趣味がきっかけで出会ったそうです。

 ゆえに、2人は恋人同士であると同時に趣味仲間でもあるわけです。

 一方で、B氏には、趣味仲間の友人がたくさんいます。男女関係なく、趣味の世界で幅広くお付き合いしているんですね。

 それでB氏はツイッターやフェイスブックをやっていて、いいね!だのリツイートだのリプライだのコメントだの、インターネット上で毎日いろんなやり取りをしています。

 で、A氏にしてみると、B氏がそうやってSNSで趣味仲間とやり取りしているのが、モヤモヤの種になるらしい。

 例えば……、

 A氏が午前中に仕事をしていて、昼休みにB氏のSNSを覗き込んでみます。するとB氏は午前中に新しい投稿をしていて、その投稿にコメントとかリツイートとかいいね!とかがバンバンつけられている。コメント欄の中には、言い合いみたいになっているのもあります。

 A氏から見れば、自分の知らないうちにB氏がSNS内でどんどん行動している形です。さらに、趣味仲間たちとのやり取りの内容までもが、常に「丸見え」です。この事実に、なんかモヤッとしてしまうのだそうで。

 この「モヤッ」というのも実にいい言葉です。怒りとか悔しさとか不満というほどではなく、あえて別の言葉を選べば「違和感」でしょうか。A氏はとにかくそういうものを感じているそうです。

 まあ、嫉妬なんでしょうね。

 A氏は、もともと依存体質のようなところがあるそうです(自称)。だから、自分の知らないところでB氏が活動していることについて、嫉妬と不安を感じるのではないでしょうか。

 まあ、とにかく「モヤッ」というレベルなので、嫉妬とか不安とかの言葉で言い表されても、きっとA氏は納得しないかも知れません。とりあえず僕からはそのように見えます。

 A氏は、B氏にSNSをやめさせたいというわけでもないのです。とにかく、SNSでの活動の様子が「見えすぎる」ことにモヤッとするらしい。

 SNSの出現で、こういう感情が湧いてくるものなんだな~と、僕は興味深く思いました。

 僕からは、具体的にああしろこうしろと対策を指示するようなことはしませんでした。

 ただ、男女のお付き合いの際、そういう「ちょっとした違和感」はほったらかしにすべきではないと常日頃考えているので、それだけは言っておきました。

 男女間の「ちょっとした違和感」って、そのまま妥協してほったらかしにしておくと、のちのちそれが致命傷になることがままありますからね…。

 だいたい、ケンカだとか別れたとか、その理由をよく聞いていると、「付き合った当初から違和感はあったけど、我慢したり見て見ぬふりしたりしているうちにだんだん膨れ上がって、気が付けば限界に達していた」みたいなのがけっこう多い気がする。(※個人の感想です)

 最初に書いた通り、A氏は僕よりふた回りも年下です。ですから、人生の選択肢はまだまだたくさんあります。B氏との関係を大切にするのはもちろんいいことですが、我慢に我慢を重ねてまで視野を狭めることはないでしょう。

2018年5月15日火曜日

◆トランスワールド航空800便墜落事故(1996年)

 1996(平成8)年7月17日のことである。一機の旅客機が、ニューヨークのJFK国際空港に到着した。

 この旅客機は、トランスワールド航空(以下TWA)881便のボーイング747-131(N93119、製造番号20083)である。TWAはアメリカの企業で、同機はこれからJFK空港での給油と乗客の乗り降りを経て、今度は「TWA800便」に切り替わることになっていた。次の目的地はフランスのシャルル・ド・ゴール空港だ。

 ところが、JFK空港でやたらとトラブルが発生した。まず、空港到着時に第3エンジンのスラスト・リバーサー(※1)のセンサーに問題が発生し、その交換作業が行われた。また、給油作業も手間取ったようだ。参考資料をざっと読んだ感じだと、燃料タンクが満タンになる前に自動的に補給作業が中断され、仕方なくいろいろ手動に切り替えて加圧方式での給油を続けたとかなんとか。

 (※1)スラスト・リバーサー…逆推力装置のこと。ジェットエンジンの向きを逆にすることで飛行機を減速させる装置。主に着陸時の減速・制動に使われる。

 しかも、である。「乗客と預け手荷物の数が一致しない」と騒ぎになった。手荷物を預けた本人が搭乗をすっぽかすのが、航空機爆破テロのやり口である。実際、以前この手口で事件が起きている。よって厳密な確認作業が行われたが、実は勘違いだったと判明。飛行機はやっとこさ離陸することになった。19時発の予定だったTWA800便がゲートを離れたのは、約1時間遅れの20時2分だった。

 エンジン始動チェックを済ませた同便は、20時14分に滑走路22Rへの地上滑走を開始。20時18分21秒に離陸許可を得て離陸した。ここで管制もニューヨーク・ターミナルレーダーからボストン航空路交通管制センター(以下ボストンARTCC)へ引き継がれている。

 程なくボストンARTCCは、同便に対して高度13,000フィート(3,962メートル)に上昇しそれを維持するよう指示した。20時26分24秒のことである。この3分後に、乗員が次のように口にしているのが記録されている。

「見てみろ、第4(エンジン)の燃料流量がおかしい。なんだこれは?」

 だがそれ自体は問題にはならなかったようだ。ボストンARTCCは、さらに15,000フィート(4,572メートル)への上昇指示を出した。

「TWA800、上昇して15,000フィートを維持して下さい」

 同便のパイロットもそれを了解した。

「TWA800ヘビー、(中略)3,000フィートから上昇して15,000フィートを維持します」

 依然、問題はなかった。ところが、離陸から12分経った20時31分12秒、レーダー画面から突如としてTWA800便の機影が消えた。場所はJFK空港の東約45キロ地点、ニューヨーク州ロングアイランドのイースト・モリチェスから南へ約13キロの大西洋上である。同便はそこを飛行していたはずだった。

 なんだ、一体何が起きた――。管制官は必死に応答を呼びかけるが返事はない。この直後、周辺を飛行していた他の航空機のパイロットたちから、続々と目撃情報がもたらされた。

「こちらスティンガー・ビー507、たった今向こうで爆発が見えた。あー、前方のおよそ16,000フィートくらいで何かが爆発して落ちた…水中に」(イーストウィンド航空507便)

「ボストン、こちらヴァージン609、九時の方角、5,6マイルほどで爆発らしきものを見た」(ヴァージン・アトランティック航空609便)

 TWA800便が姿を消した地点の周辺が人口の多い地帯だったこともあり、一般市民からの通報もかなりあったようだ。また航空・海上警備隊の人々も、爆発の瞬間と残骸の降下を目の当たりにしてすぐさま出動している。

 TWA800便は、空中で爆発し大西洋に墜落したのだった。夜の海上には機体の残骸が散らばり、3メートルほどの炎を上げているものもあったという。

 乗客212名と乗員18名は全員死亡。「トランスワールド航空800便墜落事故」の発生だった。

   ☆

 墜落の原因は何だったのか。最初に浮上した説は次の2つだった。

①イスラム原理主義者によるテロ
②アメリカ海軍によるミサイル誤射

 まず①だが、これは、事故の発生がアトランタ・オリンピックの開会式2日前だった(実際、開会後の7月27日にはアトランタ中心部で爆発テロが起きている)ことや、事故機が墜落前にアテネにいたことなどによる憶測である。アテネは何度も航空テロの舞台になっているし、そこで爆弾仕掛けられたんじゃないのか……。また、事故直後にはイスラム原理主義者を名乗るお調子者が「犯行声明」を発信している。その上、機体の残骸から爆弾の痕跡っぽいものも検出されもした。だが最終的に犯行声明はウソ、爆弾の痕跡は無関係として否定された。

 次に②である。事故当時、ニューヨーク周辺では海軍の軍艦や軍用機が訓練中だった。また、墜落の瞬間を見た目撃者の多くが、ミサイルらしきものを見たと証言している。これらが結びついて憶測が生まれたのだが、これも最終的にFBIによって否定された。

 じゃあ一体何なんだ、という話だ。アメリカ国家運輸安全委員会(以下NTSB)による事故調査は地道かつ緻密だった。7.5キロ×6.5キロの範囲に四散した機体の残骸を10カ月かけて拾い集め、最終的に全体の95%まで回収。それを組み立てて主要構造部分を再現するという気の遠くなるような作業を行ったのだ。ブラックボックスも早い段階で回収している。

 現在でも、この事故についてネットで検索すると、組み立て中の機体の画像がたくさん出てくる。最もこの事故を象徴する画像なのだろう。原因調査には多くの専門家が参加し、ウィキペディアいわく「アメリカの航空事故史上類を見ないほどの時間と労力と費用が投入された」という。ココナッツ・グローブ火災について書いた時も感じたことだが、米国の、事故災害の原因調査に対する執念というのはそういうものなのかも知れない。

 この組み立て作業によって、事故機の空中分解の経緯も明らかになった。ちょっと悲惨すぎるのでサラッと書かせてもらうが、まず機体の下部が爆発し、そこから発生した亀裂が、あっという間に機体を一周した。これにより機首が切り離される形になり、先に海上へ落下。機体の残り部分は数秒だけ暴走してから完全に失速し、きりもみ状に大西洋へ墜落したのだった。墜落の途中で、左主翼も吹っ飛んでいる。

 この悲惨な空中分解を引き起こした原因はなんだったのか。最終結論が公表されたのは、事故発生からほぼ4年後の2000(平成12)年8月23日のことだった。それは「電気配線がショートし、中央燃料タンク内の燃料に引火した」という内容だった。

 あまりにも意外な真犯人である。爆破テロか、はたまた軍の過失かという壮大な話だったのが、下手人は「小さな火花」だったのだから、にわかには信じがたい話だ。実際、現在でもこの事故については陰謀説が存在する。しかし素人目にも、「小さな火花犯人説」は説得力も信憑性も陰謀説を上回っているように見える。

 具体的に、事故当時に何が起きたのだろうか。

 まず、「燃料が気化しまくっていて危険な状態だった」ことがポイントである。事故機の離陸が予定よりも約一時間遅れたことは先述したが、この一時間の間にエアコンがガンガン使われたのだ。真夏なので当然と言えば当然だが、問題は空調装置が燃料タンクの真下にあったことだった。フル稼働した空調装置の熱がタンク内の燃料を温めてしまい、気化を促したのだ。航空燃料というやつは、液体の状態では簡単には引火しないが、気化すると途端に燃えやすくなるという特徴がある。

 気化が進んで危険な状態になったのには、もうひとつ理由があった。事故機の機体中央の燃料タンクには13,000ガロン(49,210リットル)の燃料を入れることが可能だったのだが、離陸当時は50ガロン(189リットル)しか入っておらず、ほとんど空っぽだったのだ――とはいえそれ自体には特に問題はない。もともと、TWA800便が飛行するはずだった大西洋線は航空機の飛行距離としては大したものではないため、燃料は機体の両側の主翼タンクに入っていれば十分だった。しかし揮発性の高い燃料を容器に入れて保管する場合、容器内の空間が多いと、気化して酸素と結びつきやすくなる。だから一般的に、そうした保管の場合は容器いっぱいに詰めるのが望ましいのである。その意味でも、事故当時の機体は大変よろしくない状態だったのだ。事故機が離陸した直後に記録された、「見てみろ、第4(エンジン)の燃料流量がおかしい。なんだこれは?」という言葉も、これと関係があったのだろう。

(ちなみに、これはちょっとよく分からないところなのだが、事故機がJFK空港に到着した直後、給油に手間取ったらしいことは先に書いた。この点が事故にどう影響したのか、単に「手間取ったから時間を食って燃料の気化が進んだ」のか、それとも「手間取ったから中央タンクの給油量がほんのちょっとになってしまった」のか、文脈的に、参考資料からは読み取れなかった。)

 それでも、この程度の状況でいちいち爆発して墜落されたらたまったもんじゃない。火種がなければ爆発することはないわけで、実際NTSBも、事故当時と同量の燃料をエアコンで長時間温めたらどれくらい気化するか――を、わざわざ航空機を一機使って実験している。この程度の事態はいくらでもありうるものだった。

 事故当時は、ここでもうひとつ不幸な出来事が重なったのだ。それが電気回線のショートである。事故機は製造後25年を経た古いもので、電気配線の腐食が進んでいた。このため漏電が発生し、一緒に束ねられていた油量計システムの配線に電流が流れ込んだのだ。この電流が、中央燃料タンク内にあった燃料測定器をショートさせ、その時の火花が、気化した航空燃料に引火したのである。

 こうして改めて書いてみると、なんだか不幸な偶然が重なりすぎており、風が吹けば桶屋が儲かるみたいな話である。人によっては、「そんなできすぎた話あるかい!」と、陰謀論にリアリティを感じることもあるかも知れない。2013(平成25)年には、NTSBの元調査官が「あの最終報告は嘘だ。FBIに証拠を消された」と広言しているほどだ。頭の痛い話である。この調子では、万人が納得できるような「解決編」が示されるのはずっと先になりそうだ。

 できすぎといえば、この事故は、全体としてあまりにもドラマチックであり、その真相についてはミステリアスである。衆人環視の中での空中爆発、悲惨な機体破壊、各方面の専門家による爆発原因の「推理」、そして意外な真犯人、それでも残る陰謀説…。実際、この事故を再現・解説したドキュメンタリー動画を観てみると、ちょっとドラマ性が強調されすぎている気がしなくもない。

 こういうイメージが先行してしまうと、どうしても人はそこに「面白いドラマ」を幻視してしまうものだ。日本における、例の日本航空123便墜落事故などその最たるものである。また1952(昭和27)年に起きたもく星号墜落や、1902(明治35)年の八甲田山遭難事故も同様で、さらに言えば、これは犯罪の話なのでジャンル違いではあるが、1938(昭和13)年の津山事件もそうだ。今のように情報媒体が充実していた時代とは違い、かつてはこうした「イメージ先行」の壁を打ち破るのは難しかったことだろう。今挙げた事例で、憶測とイメージによって実態が覆い隠されて後世に悪影響を残した点というについては、一部の文筆家にも責任があると思う。

 この事故の後、ボーイング社は、燃料タンク内での引火を防止するシステムを開発した。また経営難だったTWAは、800便事故が致命傷となって2001(平成13)年にアメリカン航空に吸収された。

【参考資料】
・青木謙知『飛行機事故はなぜなくならないのか』講談社ブルーバックス、2015年
・ナショナルジオグラフィックチャンネル『メーデー!:航空機事故の真実と真相』第15シーズン第4話「Explosive Proof」
・pixiv百科事典「TWA800便墜落事故」
・youtube「航空事故の瞬間:補完編(音声編)」
・ウィキペディア