◆東海道線「列車見送り客」接触事故(1938年)

 日外アソシエーツの本で『昭和災害史事典』という、まるで当研究室のために書かれたとしか思えないシリーズが存在している。

 筆者の手元には1996年発行の第二版があり、時間があるとパラパラ眺めたりしている。事典なので、書かれているのは各災害の名称と簡単な説明だけなのだがとにかく興味深い。

 で、そのうちの「①昭和2年~昭和20年」編を紐解くと、1938(昭和13)年1月に発生したという、日付も分からない鉄道事故が紹介されている。引用すると、以下の通りだ。

 

東海道線列車見送り客接触事故(愛知県西春日井郡西枇杷島町)
1月、愛知県西枇杷島町で、出征兵士を見送ろうとした客が国鉄枇杷島駅近くの線路わきに集まった際、東海道線の列車にはねられて30名余りが死傷した。

 

 分かるのは、これだけである。30名余りが死傷したというほどだから大惨事なのだが、発生した日付も、正確な死傷者数も不明というのは奇妙な話だ。もちろんググッてもこの事故の情報は一切見当たらない。

 引用した『昭和災害史事典①昭和2年~昭和20年』の編集後記にも、この期間に発生した災害は記録の発掘が難しいとあった。

 また戦争末期にもなると、言論統制化・戦時下という特殊な状況だったため、報道管制などによって公表されなかったものもあるという。

 上記の事故の詳細な情報が不明である理由が何なのかは分からないが、簡単に記録が見つからないのも仕方ないことなのかも知れない。

 もちろん情報が揃っている事例はできるだけきちんと執筆するつもりだが、これからはこういう詳細が不明な「小ネタ」もどんどん出していこうと思う。

【参考資料】
◆日外アソシエーツ『昭和災害史事典①昭和2年~昭和20年』1995

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