1996(平成8)年12月23日のことである。和歌山県御坊(ごぼう)市湯川町小松原の、とあるパチンコ店の駐車場に行列ができていた。
このパチンコ屋は、本日が新規オープン。おそらく店舗そのものは前からあったのだろう、経営者が変わっての新規開店だった。
筆者はパチンコには疎いが、きっと新しい店舗がオープンするとなるとパチンカーは居ても立ってもいられないのだろう。この日、行列には300名が並んでいた。お店のオープンは午後6時だというのに、正午から並び始めた人もいたというから驚きである。漫画『連ちゃんパパ』や『ぎゃんぷりん』の世界だな……と思う。
さて、時刻は午後4時35分頃。この行列に、店員がパチンコ台を割り当てるための整理券を配り始めた。
どうしてここで整理券が出てきたのかは不明だが、もし、あまりの人の多さに店側が入場制限をかける意味でやったのだとすれば、これはマズい判断だった。群衆に対して「並び方の順序やルールを途中で変えさせる」のはご法度で、それで群衆が暴徒化するケースは少なくない。
憶測はともかく、事実として、並んでいた300名の人々は整理券を手にしようと店の入口へ殺到した。当時は4名の警備員も現場にいたのだが、抑えることはできなかった。
これで将棋倒しが起きた。5、6名が押されて転倒し、最前列にいた77歳の男性が正面入口脇のガラスに頭から突っ込んだのだ。このガラスは高さ4メートル、幅2メートル、厚さ1センチの一枚ガラス。男性は突き破ったガラスで首を切り、出血多量で亡くなった。
他にも、付近にいた2名の女性がガラスの破片で手を切る怪我をした。
【参考資料】
◆http://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/circle/03/nc12gaku.html
◆明石市調査報告書『過去の群集事故事例』
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