◆ビンドゥラ金鉱崩落事故(2020年・ジンバブエ共和国)

 2020(令和2)年11月25日に、アフリカ南部のジンバブエ共和国で起きた事故である。

 ジンバブエ共和国とは一体どんな国なのか。――はっきり言って「大変な」国である。折角の機会なので少し詳しくここに書いておこうと思ったのだが、いざ調べてみると、政治・経済の全ての情勢がとにかく不安定で、日本と比べると体制的にひどく混乱している。いろいろ書き始めたらキリがなさそうなので、興味のある方は独自に調べてみて下さい。

 事故が起きるまでの経緯も、そんな同国の「大変さ」が感じられる内容だった。

 まず前置きとして、ジンバブエ共和国は鉱業が盛んで、これが主な外貨の収入源となっている。輸出される鉱物の六割が「金」だとか。

 よって金鉱が栄えるのは当然なのだが、一方で、失業者が食い扶持を得るために金鉱山を「個人的に」採掘するような行為もかなり多いらしい。国際危機グループ(IGC)によると、こうした「個人採掘者」は同国内で150万人はいるという。この個人採掘という行為は、ジンバブエ共和国では失業者のセーフティネットと化している。

 さて以上を踏まえて、今回ご紹介する事故は、同国の首都ハラレから北へ七十キロの場所にあるビンドゥラ(Bindura)で発生した。十年前に閉山したはずの金鉱山で25日の夜、坑道が崩落したのだ。

 閉山したはずの鉱山で何があったのか。実はここでも、多数の「個人採掘者」が入り込んで、残っている鉱石を採掘し続けていたのだ。彼らは閉山の折に解雇された元作業員たちだった。この日は、爆破作業を行ったところ坑道を支えていた支柱がいくつか崩壊してしまったのだ。

 資料には「複数の鉱山シンジケート」が絡んでいたとあり、背後に非合法の組織がいたようなニュアンスである。

 そんな状況下で起きた事故なので、事故当時、鉱山の中に何人がいたのか、正確な人数は不明である。だがジンバブエの鉱山労働者組合によると、少なくとも約40名が閉じ込められたのは確実らしい。崩落から数時間後には6名が救助されている。

 悪いことに、その後で大雨が降ってきた。崩落した坑道は水没してしまい、救助活動は難航。救助隊とボランティアが数日かけてポンプで水をくみ出して、30日の昼には一名の遺体を収容している。

 ニュースサイトを見る限りではここで情報が途絶えており、閉じ込められたままの人々の救助活動がどうなったのかはまったく不明である。

 「個人採掘者」は、貧困と新型コロナウイルスの流行の影響で、今後ますます増えるだろうとみられている。

【参考資料】
閉鎖された金鉱山崩落事故、1人の遺体収容 ジンバブエ
閉鎖された金採山で坑道崩落、個人採掘者ら40人不明か ジンバブエ

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