2014年10月14日火曜日

◆ビジネスホテル白馬火災(1978年)

 1978(昭和53)年6月15日、午前2時頃のことである。愛知県半田市住吉町で、ある民家の犬が急に吠え出した。

 なんだなんだ、うるさいぞ。目を覚ました住人が庭に出てみたところ、びっくり仰天。なんと隣のホテルが炎上していた。しかも半端な燃え方ではない、大火事だ。

 このホテルが「ビジネスホテル白馬」である。住人はさっそく119番通報し、これが第一報となった。

 つまりこの火災の第一報は、「犬」がきっかけでもたらされたわけである。

 この時すでに、火災発覚から20分が経過していた。

   ☆

 少しだけ時間を巻き戻す。当時、このホテルには宿泊客33名と従業員3名がいた。

 従業員たちは、比較的早いうちに火災に気付いていた。火災報知器もちゃんと作動していたようだ。それに出火したのも1階の管理人室の前の廊下と、とても分かりやすい場所だった。

 だがこの時、すぐに初期消火がなされたかどうかは不明である。消火活動自体は行われたようだが、それが従業員の脱出前なのか脱出後なのか、資料を読んでもよく分からなかった。

 とりあえず確かなのは、彼らにはもう避難誘導や通報を行う余裕がなかったということだ。命からがら、窓から逃げ出している。

 ここで、なぜか火災報知器のスイッチが切られた。ベルが鳴りっぱなしでは近所迷惑だとでも考えたのだろうか 

 ただ、もしかすると、報知器のスイッチが切られなくとも宿泊客たちにはベルが聞こえていなかったのかも知れない。資料の中には、外に脱出した従業員が火事ぶれを行ったことで、宿泊客たちのほとんどが目を覚ましたと書かれている。ということは報知器の鳴動は目覚ましにならなかったということだ。

 火事ぶれで起こされた宿泊客たちは、脱出を試みた。しかしビジネスホテル白馬は、繰り返される増改築により建物の中は迷路化していた。さらに階段もひとつしかなく、煙はその階段を伝って瞬く間に2階3階へ及んだというのだからどうしようもない。おそらく、廊下から脱出できた者はほとんどいなかったのではないだろうか。ある者は窓から飛び降り、ある者は隣家の屋根を伝って脱出したという。

 またこのホテルには、鉄格子の嵌まった窓もあった。もとがラブホテルだったそうなので、飾りか何かだったのだろう(他の部屋では窓から脱出できた人もいるので、全室鉄格子ではなかったと思われる)。それが一部の宿泊客の脱出を困難にした。

 この鉄格子は、20センチ幅という、大人が通るには厳しい間隔で取り付けられていた。で、その部屋を宛がわれた5名の季節労働者がいたのだが、彼らは鉄格子のため飛び降りることもできず(そこは2階だった)救助が来るまで部屋に閉じこもり続けた。

 この5名のうち1名は途中で廊下に飛び出して命を落としているが、リーダー格の人がドアを閉めて、他の3名を始終落ち着かせていたという。最終的に、消防によって鉄格子の一本が切断されたことで、彼らは助けられた。

 防火シャッターも閉じなかったらしい。最終的に、ビジネスホテル白馬は、本館と別館を合わせて663平方メートルが全焼した。

 死者は7名。すべて宿泊客だった。おそらく煙を吸ったのだろう。こういうケースで、純粋に「焼け死ぬ」ということはほとんどない。大抵の死因は一酸化炭素や有毒ガスである。

 さて、この火災の原因は一体なんだったのだろう。記録には、以下のように記されている。

●発火源……不明。
●火元………たぶん1階の調理場。
●延焼の経過……不明。
●着火物……不明。

 つまり何も分からなかったのだ。

 まあ当時の従業員たちの責任は火を見るよりも明らかなわけで――ことが火災なだけに、と、これは悪い冗談――だからこそ、原因調査もあまり熱心に行われなかったのかも知れない。これは単なる想像だが。

【参考資料】
◆サンコー防災株式会社ホームページ
http://www.safeland.co.jp/kouza/hotel/hotel_007.html
◆消防防災博物館
http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B312&ac3=2461&Page=hpd2_view
◆『火災と避難』
http://www.jlma.or.jp/anzen/pdf/bousai_kasai_hinan1-10.pdf

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