◆日本カーリット工場爆発事故その3(2010年)

 どぼずばああああああん。

 2010(平成22)年1月7日のことである。横浜市金沢区福浦にある日本カーリット株式会社の工場で爆発が……

 え、それはもう聞いたって?

 いやいや。よく見て下さい。日付と時刻が違うでしょう。2年前と同じ場所で起きちゃったんです、またしても爆発が――。

 時刻は、資料によってまちまちだが、大体17時45分~48分頃で間違いないようだ。場所は、横浜新都市交通金沢シーサイドライン・産業振興センター駅からおよそ600メートル東の工業団地の一角である。

 一大事である。消防車40台が出動して、20時15分頃には鎮火した。

 幸いなことに死者はいなかったが、従業員8人と、通りすがりの車に乗っていた男性2人、そして付近の工場の従業員1人が怪我を負っている。資料によっては合計12人となっているのもあるが、ここではとりあえず合計11人ということにしておく。

 このように、近くの乗用車や他の工場にまで被害が及んだほどである。爆発した建物もただでは済まなかった。工場敷地内の3棟が全焼、1棟が半焼。さらに全壊が4棟、半壊が3棟、部分壊は6棟に及んだ。

 また周辺では、他の企業のものだろうか、61の事業所のうち82棟、車両69台、動産及び工作物10件が損壊している。全体の損害額は約5億に上った。

 さっそく日本カーリットでは、社長がその日の22時から記者会見。謝罪し、原因追究をしっかりやることを宣言した。

 翌日には神奈川県警が実況見分を始めて、有機製造室棟にあった高圧釜が敷地外の道路まで吹き飛んでいることを確認。またこの棟の焼損と、周囲の損壊が最も激しいことから、この付近で爆発が起きたと睨んだ。さらに業務上過失致傷の容疑で事情聴取も行っている。

 爆発の原因は、オートクレーブという装置が暴走したためと推測された。オートクレーブとは圧力鍋みたいなもので、中を高圧にして作業を行なう耐圧式の装置である。この中で圧力が急激に高まったため、ドカーンといってしまったらしい。

 では、なんでそのオートクレープの圧力が高まったのか……、その理由は、資料を読んでも筆者にはよく分からなかった。

 だがとりあえず、ほぼ一年後の12月20日には、会社と従業員3人が注意義務を怠って爆発を起こしたとして書類送検された。容疑は業務上過失傷害や業務上過失爆発物破裂罪、そして労働安全衛生法違反である。

 そして横浜簡裁は1月4日までに、この3人に罰金計200万円の略式命令を出した。決定はいずれも昨年12月27日付けである。

 この日付を見て、「あれ?」と思ったのは筆者だけだろうか。そういえば前回の2008年の事故でも、年末ギリギリに起訴されて、年明け早々にどさくさ紛れという感じで一瞬で処理されていた。今回と全く同じである。

 多分これは――半ば「邪推」と考えてもらって結構だが――国の側の配慮だろう。

 戦前からの大規模火薬産業で、3回も爆発事故を起こしているのに(うち2回は死亡者あり)まだきちんと存続しており、そのわりにあまり名前の知られていない一流企業で、しかも2008年と2010年いずれの事故もあまり大きく報道されていない……ということで、なんとなくそういうバックがついていそうだなーとは思っていた。

 チッソなんかと同じだね。もし株を買う機会があったら、ぜひ日本カーリットにしよう。そうしよう。

 事故があった工場の跡地は、その後更地になって売却の話が進められたりしたようだ。ネット上ではそこまで確認できたが、今どうなっているかは不明である。

【参考資料】
◆ウィキペディア
はまれぽ
日本カーリット㈱横浜工場における爆発火災の火災原因調査結果について
takumi296's diary
ウィキニュース『横浜の化学工場で爆発事故 従業員ら11人けが』
カナロコ
日本カーリット:横浜市の工場で爆発、4人が負傷し炎上中-地元署
化学業界の話題
コトバンク

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