◆八幡製鉄労働会館転倒事故(1958年)

  1958(昭和33)年1月30日のことである。

 この日は木曜日で、福岡県八幡市(現在の北九州市八幡区)にあった八幡製鉄労働会館で、美空ひばり歌謡ショーが開かれていた。

 このショーは複数回に渡って行われ、事故は2回目の公演と、3回目の公演の間で起きている。観客の入れ替え中に、建物の正面玄関付近が大混雑となったのだ。

 あまり詳しいことは分からないが、お客の入れ替え中に出入口が詰まったというのは、群集事故のパターンのひとつにはまったのかな、と想像できる。大方、2回目の公演後に帰ろうとする人と、3回目の公演のために入ろうとした人たちがかちあってしまったのではないか。しかも出入口は正面玄関ひとつだけだったのだろう。

 この大混雑の中で複数名が転倒し、うち3名が下敷きになって怪我を負った。一人は63歳の大人で(性別は不明)、肋骨を折り全治一カ月の重傷。また7歳の女の子と2歳の男の子も意識を失っているが、間もなく回復したという。

 事故そのものはシンプルで、これ以外の情報もないのであとは書くこともないのだが、ひとつだけ気になったのは、この現場となった八幡製鉄労働会館というのは一体どこにあった(今もある?)のか? ということである。

 資料では、八幡市の「仲町」という場所にあったというのだが、ちょっと調べてみても、同名の町名、あるいはかつての仲町にあたるような地域は見つからなかった。

 もしかして福岡県ではなく、別の都道府県の「八幡市」ではないだろうな……とも考えたが、資料によると、事故で怪我をした人の住所は当時の福岡県八幡市のものだったのでたぶん間違いない。

 さらにいろいろ調べていくと、どうも北九州市八幡東区尾倉という場所がそれっぽい。古い新聞では、このあたりの地域は仲町とか本町などと記載されたケースもあるようで、なんだか不思議である。

【参考資料】
太古の新聞記事など

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