2016年4月10日日曜日

◆ゴールデンカムイと藤子F不二雄

 先日ナントカ賞を取った漫画『ゴールデンカムイ』は、連載スタート時からずっと読んでいます。立ち読みです。

 立ち読みする漫画も厳選する性格なので、欠かさず読んでいるというのは、やはり他の漫画にはない面白みを感じているということなのでしょう。

 実際、面白い。日露戦争直後のモヤモヤした日本、しかも北海道を舞台に、戦争の生き残りである「不死身」と異名を取る男が、アイヌ少女と組んで財宝探しを始める。しかもそれは、現政府に不満を持つ兵団や、監獄から脱獄してきた囚人たちとの取り合いに発展して――という内容。

 こうした歴史的人間ドラマを主軸に据えつつ、ヒグマと戦ってみたりアイヌの民族習慣が紹介されたりと、さまざまな要素が盛りだくさん。しかも、どの要素も実に丁寧に描かれています。

 改めて大まかな内容を書いてみると、「こりゃ毎週立ち読みするわ」と自分でも納得するのですが、しかし単行本を購入するに至らないのにも、それなりの理由があります。

『ゴールデンカムイ』は、あまりにも様々な要素を盛り込みすぎです。そのため、どうもストーリーが主軸から離れてしばしば脱線しがちなのです。

 ただの脱線なら別にいいのですが、なまじ全ての描写が詳細に過ぎるため、脱線した先も本線であるかのような感じがあり、読者としては混乱するんですね。それぞれの「本線」が有機的な結びつきを見せる様子も(今のところ)ないようですし。

 要は、バランスが悪い。

 たまたま最近「大全集」を読んでいるので引き合いに出すのですが、物語に盛り込まれた要素のバランス感覚ということで真っ先に頭に浮かぶのが藤子・F・不二雄です。

 昔読んだ『エスパー魔美』を今になって読み返しているのですが、子供の頃には気付かなかった細部の描き込みや、物語を面白くするために盛り込まれたさまざまな要素の量にただただ驚くばかりです。コミカル、恋愛、色気、時に劇画ばりのダークな描写、サスペンス、動物の可愛らしさ…。

 こういったたくさんの要素が、あの、決して「大人向け」とは言えない優しい絵柄の中で全て有機的に結びついて、バランスよく毎回一話完結の物語として成立しているのです。

 漫画である、という以外は何もかもが違う作品なので比べても仕方ないのかも知れませんが。

 それでもあえて比較するなら、『ゴールデンカムイ』は、その絵柄の中で、多くの要素がバランスよく描かれていない感があります。コミカルから殺戮までと、本当にあの作品に盛り込まれた要素は膨大で、情報量の幅も非常に幅広いのですが、絵柄はどちらかというとコミカル寄りで、劇的なシーンもどこかシリアスになり切れないようなところがある。

 しかし『エスパー魔美』では、殺人未遂に至るショッキングなシーンでも、さっきまでホームドラマを描いていたはずの絵柄の中で、さほど違和感なく描かれています。

 なんなんでしょう、この違いは?

 たぶん、連載と、一話完結の違いもあるんでしょう。一話完結の短編の場合、無駄な箇所は切って捨てて、いわば「器」の大きさに合わせて料理を盛り付けなければなりません。できあがるのは一品料理です。だから否でも応でも、作者の調理技術に応じた作品が作られる、ということなのでしょう。

 だけど連載の場合は、際限のないコース料理というか、なんでも揃ってるバイキング料理みたいなところが、たぶん、あります。なんでもあるけど、それらを貫く、主軸から外れない統一感を出すのは至難の業です。

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