2014年9月8日月曜日

◆優しいつながり

 職場の人間関係というのも不思議なものです。

 どんなに親しくしているつもりでも、離れてしまうとそれっきり、ということはよくありますね。

「離れてしまう」というのは、職場内の異動に限りません。辞めた場合もそうです。親しくしていたけれど、辞めたらもう会うことも話すこともない。そういうことはあると思います。

 さらに極端な例を挙げれば、亡くなった場合もそうです。職場内のある人が亡くなったとして、その時その時はもちろん衝撃的ですが、少し経つと拍子抜けしてしまうほど僕らは当たり前の日常に戻るものです。まるでその人など最初からいなかったかのように…。

 何年か前、僕は職場の人が亡くなった時に、あまり騒がずにいたので「きうりさん冷たい」と言われたことがあります。

 でも僕に言わせれば、その人が亡くなって一週間も経てばもう平然と今まで通りの仕事をしている、そういう職場の空気自体の方がずっと冷たいと思います。

 でも事実、そんなもんです。

 もちろん職場に限らず、学生時代だってそんなもんでした。親しくしていたクラスメイトも、クラスが変わったり卒業したりすればハイそれまでよ。親しかった先輩が、生徒会室にOBとして遊びに来たりすると反対にちょっとウザかったりして。

 こういうのは、わりと普通なのでしょう。

 その意味ではみんな「冷たい」のだとは思います。

 こういう空気の源泉はどこにあるんでしょうね。

 で、これはけっこう由々しき問題だな~と思うことが最近ありました。

 僕の知人が、退職したら「今までの人間関係がなくなってしまった」ことで途方に暮れたそうなのです。

 その知人いわく「自分は仕事をしている時、人間関係をうまくやっている方だと思っていた。でも退職した途端にその人たちと関係が希薄になって、こんなもんだったのかな~」とのことでした。

 でもこれって、たぶんごく普通のことなんですよね。今まで書いた通り。

 言い方を変えれば、こういうことがごく普通だからこそ、由々しき問題なのです。

 定年退職した人が、やることがなくなって鬱になる、というケースをたまに耳にします。おそらく一番大きな原因はこれでしょう。今まで仕事一本でやってきた人が、辞めたらあっさりそれまでの人間関係から閉め出されてしまった。これは大変なことです。

 実は僕の父親も、一時期それで鬱になりかけて。しかも体調まで崩したものだから一気に精神的に落ち込みまして。

 今は色々と通う場所や、やることを見つけております。また心療内科通いも刺激的で楽しいらしく、なんの心配もない状態なんですけどね。

 だから、こういう話は身に迫ります。

 対処法は簡単で、仕事なんてテキトーにやって、人間関係で悩むほど根を詰めないことです(仕事に関する悩みの大部分は、人間関係次第ですから)。職場の人の縁も一期一会のつもりで、その時その時で大事にしつつも、終わったら終わったでさっさと諦める。そのかわり、仕事以外でも楽しめる人間関係を、他にもたくさん創っておけばいいのです。

 実際、そういう仕事以外の人間関係をもともと持っている人は、退職してからも結構ひょうひょうとしているものです。僕の知っている人にも何人かいますが、そういう人は仕事をしていてもしていなくてもあんまり変わっていません。よく聞くような「退職したら一気に老けた」ようなことも特になく、本当にひょうひょうとしています。

 そういう、退職後に受け皿になるような人間関係を、いかに前もって構築しておくか…。

 それについて考えると、インターネットというのは有望株ですね。

 ここはまさしく、仕事とは関係のなく人間関係を作ることができる理想の場所です。

 僕の知っているある人が、ネットやツイッターの世界について「この世界はみんな優しい」と言っていたのが印象に残っています。ネットの世界は、気の合う人や好きな人とだけ交流ができる、いい世界です(その交流の仕方にも、コツや技術みたいなものはありますが)。

 もちろん、何から何までいいことずくめなわけじゃないインターネットの世界です。それにネットの世界というのも、なんだかもう当たり前のものになった感があって、多くの人にとっては、その有難みを改めて実感する機会も少ないんじゃないでしょうか。でも僕はいまだに、ネットの世界はネバーランドだと思っています。

 そしてフェイスブックやラインのおかげで、だんだんとネットの世界と現実の世界の境界線も薄れてきていますね。これが、今は人と人の新しいつながりの形になっています。

 今SNSで交流している、僕やその前後くらいの世代の人たちは、将来「SNS世代」とか呼ばれて、ネット上での交流で文字通り「死ぬまで」繋がり合うような老後を迎えることになるんじゃないかな。

 そしてその世代も、ネット上から一人、また一人、といなくなっていくことでしょう。その時、その後ろの方には、どんな風につながっているどんな世代が存在しているのか…。僕にはまだ想像もつきません。