2013年6月30日日曜日

◆小説『階段途中のビッグ・ノイズ』


越谷オサム『階段途中のビッグ・ノイズ』。痛快無比で明るく楽しい、完全無欠の青春小説です。

なんて書き方をすると大げさかも知れませんが、それが僕の正直な感想です。

不祥事から廃部に追い込まれそうになった軽音楽部で、主人公が仲間を集めて再起を図るという物語。

もちろん簡単に再起といってもそれは簡単ではなく、障害も困難もたくさんあります。それらを乗り越えて迎えた文化祭のステージでは、さらにアッと驚く展開が二重三重に待ち受けています。

この作者の作品は、一番最初に『陽だまりの彼女』を読んで、それが僕の中ではとてつもなく評価が低かったので、それ以降は他の作品に手を出すのを躊躇していました。

でも『階段途中のビッグ・ノイズ』はこの通り、僕にとっては前回読んだ作品への不満を補って余りある魅力いっぱいの作品です。また今読んでいる短編集『金曜のバカ』もまさに珠玉の短編集という感じで、今はむしろこの作者の作品を積極的に読みたいくらいです。

この『ビッグ・ノイズ』は漫画版もあるようです。ちらっと読んで、これも気に入ったら買おうと思っていたのですが、やめました。別に嫌いな絵柄ではないのですが、ちょっと苦手なタイプだったのです。『3月のライオン』と似ているところがあって、ページ内に会話文がごちゃごちゃと詰め込まれるあの画面構成が僕はちょっと不得手でして。空間のリズムってあると思うのです。

ただ漫画版の絵柄とかキャラクターの見た目の設定とか雰囲気は嫌いではないです。特に3巻の表紙。主人公と、ヒロインの亜季ちゃんが一緒に帰っているシーンが再現されていました(太ももも)。

あのシーンが僕が大好きです。好きな女の子から「そういえばよく弾いてるあの歌のタイトルはなんていうの?」と問われるシーンには妙にキュンときました。あのシーンを読んだ直後には、さっそく彼女が口ずさんでいたあの曲を調べていたほどです。

とはいえ原作にも欠点がないわけではありません。あまりにも平和で、予定調和的で、登場人物がみんないい人すぎるストーリーは能天気でライトに過ぎるともいえます。

実際、僕が薦めてこの本を読んでくれた友人は読後に「これってライトノベルって奴じゃないんだよね?」と尋ねてきたほどです。

クセのなさが、かえって好みを分けてしまうことってありますね。

ただこの点について弁護しますと、これはライトとは言っても単なる「軽佻浮薄」ではなく、「天国に上るような軽やかさ」とでも例えられるものだと思います。

安心して読めるハッピーエンドの青春小説。そういうのを読んでみたいという方には、断然おすすめです。