2013年1月7日月曜日

◆米澤穂信「古典部」シリーズ感想

 米澤穂信作品は最近までよく知らず、創元推理文庫で出ているシリーズの背表紙を「また面白そうなタイトルだなあ」と思いながら見ていた程度でした。

でもアニメ化されましたし、あと友人知人で好きな人も多いので、僕も読んでみました「古典部」シリーズ。アニメは観ていませんが、OPとEDは何度も見ましたので、小説を読んでいるだけであのアニメ造形のキャラたちが動き回っている様が頭に浮かんでおりました。

個人的に好きなのは『愚者のエンドロール』と『ふたりの距離の概算』。それから短編の「心当たりのある者は」です。

既に読んだ方はなんとなく分かると思いますが、ミステリ色の強い作品が、やっぱり僕は好きです。

『愚者』は、ミステリに対する作者の愛情やこだわりが詰まっています。しかもオチは「そう来たか!」と驚かされること請け合いで、一粒で二度美味しいウイスキーボンボンみたいな作品です。

『ふたりの距離の概算』は、ミステリ作家の面目躍如とでも言える作品です。一見して掴みどころがないように見える日常の謎が、これでもかとばかりに構築的に散りばめられた伏線と手がかりをひとつひとつ辿っていくことで、解き明かされます。

ただ『概算』は、構築的すぎて、情緒的な味わいをちょっと壊している感もあるかな。「解決編」とあと「動機」は、その情緒の部分がとても好きだったので、その他のいかにも作られたという感じの部分がやや気になりました。でも逆に言えば気になる点はその程度で、マラソン大会の場面が物語の主軸になっているというのも、これは絶妙で上手です。

あと「心当たりのある者は」は、例の『九マイルは遠すぎる』の古典部バージョン。これも秀逸な傑作です。

僕、個人的に思うんですが、日本のミステリ作家による『九マイル』へのオマージュ作品って、すでに本家を越えていますよね。日本のミステリ文化ってすでに無形文化財レベルだと思うのですがどうでしょう。

さてところで、他の『氷菓』『クドリャフカの順番』その他の短編ですが、この辺りはどう評価したらいいのかよく分かりません。とにかく「薄味」だからというのがその理由です。キャラクターの造形も淡いですし、ミステリ色もあまり濃厚ではありませんし、ストーリーもどっちかというと地味です。だからどうも、個別の作品は物凄く好きなのですが、古典部シリーズ全体として見るとどう感想を書けばいいのかよく分からない、というのが正直な感想だったりします。

もっともこのシリーズの「薄味」加減も、同じ作者の他の作品や他のシリーズと比べてみれば、その意味と魅力ももっとはっきり分かるかも知れませんね。