2012年9月23日日曜日

◆ 創芸社クリア文庫『RAIL WARS!〈3〉日本國有鉄道公安隊』感想

RAIL WARS!〈3〉日本國有鉄道公安隊 (創芸社クリア文庫)
RAIL WARS!〈3〉日本國有鉄道公安隊 (創芸社クリア文庫)

 pixivでフォローしているバーニア600氏が表紙と挿絵を手掛けているということを知り、購入しました。

 このクリア文庫というレーベルがあまり売れていないのか、最新刊の3巻だけが書店にあったのでとりあえず買ったのはこの巻からです。

 舞台は、国鉄が廃止されていない日本。そこでは国鉄公安隊なる組織が編成されており、主人公たちはその訓練生である高校生たちです。

 前巻までを読んでいないので分からないのですが、彼らはそれまでも、鉄道を巡るトラブルで大活躍していたようです。そんな彼らが今回は、アンチ国鉄のテロリスト集団・「RJ」からの脱出者の保護指令を受けます。そして追手との対決――。

 この対決で得たテロ情報の取り扱いと、脱出者の素性については「以下次巻!」のようです。今回の巻の見せ場はここから。土砂崩れで鉄道が不通になったため移植予定の臓器を輸送できない、というトラブルに主人公たちが遭遇してしまうのです。

 そこで軌道自転車でもって、ふだんは使われない古い路線のほうをブッ飛ばしていくことになる。豪雨の中を、仲間と力を合わせて。

 この「仲間と力を合わせて」がミソです。直前に仲間たちの気持ちがバラバラになっており、チームワークがうまくとれなくなっていたのです。ですからこの軌道車の運転は、物理的にも精神的にも彼らにとっては乗り越える試練なのですね。

 この小説の面白さは、こういっちゃなんですが、「ありきたり」のネタへの息の吹き込み方にあると思います。

 未成熟の少年少女の成長、テロ集団との戦い、試練を乗り越えることによるチームワークの再生などなどの要素は、それだけ見るとそう珍しいものではありません。しかし国鉄が廃止されていない日本を舞台にすることで、それらの要素がまったく新しいものであるかのように、不思議な現実感をもって迫ってくるのです。

 ただこの設定が万人向けかというとそうでもなく、鉄道関係の描写はマニア向けと思われます。僕もそうですが、分からない人にはチンプンカンプンなんじゃないかな。もちろん、ダムの描写がチンプンカンプンでもそれなりの評価を得た『ホワイトアウト』などの例があるように、それは作品の面白さを絶対的に減ずるものではないのですが。

 ちなみに僕は、鉄道事故のルポなんぞを書いたりしていたおかげで、鉄道というアイテムや舞台設定にまつわるロマンをそれなりに感じることができました。それに後半のジェットコースター的な展開も、なんとなく花園線の暴走事故を連想させてハラハラしましたね(そういえば作者も奈良の近鉄沿線育ちだそうです)。

 なんとなく味気ない感想文になってしまいましたが、この巻の続きもさることながら、1巻と2巻も気になって仕方ないので引き続き追いかけていきます。