2012年6月25日月曜日

◆『グスコーブドリの伝記』感想


 この作品、僕は知らなかったのですが、文庫版でも出ているんですね。宮沢賢治の作品が、ますむらひろしの作画で描かれたものです。

アニメ版『銀河鉄道の夜』の原作となった「ネコ宮沢賢治」シリーズのうちのひとつ。とでも書いておけば分かりやすいのかな。

今回、映画化の話が持ち上がっていたのを見て、久しぶりに読み返しました。と言っても僕が読んだのは1983年に朝日ソノラマから出た大型版のやつです。小学生の時に一度読んだのを、20年ぶりくらいに改めて図書館で借りてみました。

内容は、飢饉によって一家離散に陥った経験を持つ少年・ブドリの「伝記」です。

伝記といってももちろん架空のものですが、これ、「伝記」なのは考えてみると実に暗示的ですね。この物語はブドリの生まれてから死ぬまでが書かれているよ、と最初から宣言されているわけですから。

ですから読者としては、なんとなく、ブドリはどんな最期を迎えるんだろう……と考えながら読み進めることになります。

つまり身も蓋もない言い方をすると、この作品のテーマは「ブドリはいかに死ぬか」でもあるわけです。読者はこの「伝記」を通して、人々のために命を賭した一人の人物の最期を看取ることになるんですね。

では実際のストーリーはどうかというと、一家離散の憂き目に遭ったブドリは、農家の手伝いをしながら渡り歩き、最後にはイーハトーヴの火山の管理局の研究者・技術者としての地位を築きます。しかし最後には飢饉が再来するのです。

それを防ぎ、イーハトーヴの人々の命と生活を救うべく、彼は火山をわざと噴火させて地上の「温暖化」を起こします。それは、実行した者は地上へ戻ってくることはできない、まさに命懸けの、決死の行為でもありました。

これが「ブドリの最期」です。

斉藤隆介の童話を彷彿とさせる、美しい自己犠牲の物語ですね。農村の祖霊信仰のイメージにも通じるものがあります。

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